高血糖で入院するまで、
年に一度の職場健康診断が嫌いだった。
何とか理由をつけて逃げられないかと思っていた。
理由は二つ。
まず、原疾患である先端巨大症を見つけてくれなかった不信感だ。
もう一つは、スクリーニングといっても、
高度な病院でもっと細かなホルモン血液検査をしているのに、
何をいまさら、という思いだ。
ただ、受診率が低くなると、
職場の健康係が上司から叱責されるようで、
気の毒だから受ける。
主体性はない。
検査入院中は血糖の働きを調べるだけではなく、
高血圧性臓器障害も検査をした。
ハイリスク群の仲間入りをしているから、
高度な検査である。
病院にあって、職場健診にないものはもちろんある。
頸動脈エコーやMRIといった検査は、
健診メニューにはない。
前者は、直接には、脳血管疾患の危険を調べるわけだが、
頸動脈が肥厚していたら、ほかの冠動脈も怪しい。
頸動脈壁の厚さは、
全身の動脈硬化伸展度ど相関関係があるからである。
その点、健診は病気の可能性を選別するのが目的だから、
いきなり、お金のかかる検査はしない。
だけど、高度なはずの検査が
職場健診のものと案外重複していたことに驚いた。
簡単な検査だから、とバカにしていたのが恥ずかしい。
自分が健診の意味に無頓着だっただけである。
むしろ、健診を毎年受ければ、
自分の血管の老化現象を点検できるわけで、
その意味を知れば、実に有難い制度だった。
たとえば、脈波伝播速度の測定がある。
ベッドに寝て手足をクリップのようなので挟んで、
波のあるグラフを調べるアレだ。
血管の伸縮性を調べるもので、
動脈硬化がすすむと、脈波伝播速度が速くなる。
血管の老化状況がわかるというもんだ。
細い血管を調べるには、眼底検査が有名だ。
眼の網膜にある動脈と静脈を直接観察する検査だ。
健診メニューにはないけど、
コンタクトレンズを交換する時、診てくれるのね。
まぶしいけど、高血圧・高血糖を患う身としては、
ありがたいことである。
全身の動脈硬化をみる指標のひとつになりうるし、
眼の血管は脳の近くにあるため、
眼の血管異常があれば、脳でも同じようなことが起こっていると
推測できると考えられている。
健診で異常な数値が続き、血管の老化が疑われたら、
エコーや眼底検査といった視覚的な検査を組み合わせて
調べると効果的なようだ。
突然、危険な病気が見つかって
あわてないためにも、
患者自身が健診を利用する
攻めの気持ちが、自分や家族を守ると思う。